宗像靖彦クリニックでは、健康生活に必要なあらゆる情報発信をしております。
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バレエバレエの歴史2015.03.01
当院では、バレエダンサー・舞踊家の為の医学管理サービスを行っております。バレエダンサーにとって足は生命線といっても過言ではありません。昨今の日本国内バレエ事情は、幼い頃からコンクール重視の風潮が強いため、骨格が安定しない時期からトウシューズを履いて、足に負担のかかる難しいテクニックを「叩き込まれる」ことが多いようです。日本では幼い頃からバレエを習う機会が多いのですが、バレエダンサーとして大成する機会は極めてわずかです。日本人の体形がクラシックバレエ向きではないことが原因と言われてきました。しかし、昔の欧米のクラシックバレエダンサーの写真と、現在の日本人クラシックバレエダンサーの写真を比べても、日本人ダンサーが特に見劣りするということはありません。
バレエの本場である欧米にあって、日本にないものは何でしょうか?
それは体系化されたバレエ教育です。
バレエはイタリアのルネサンス期に生まれ、「宮廷バレエ」としてフランスに伝わりました。貴族のたしなみであったことから、ダンサーには美しさと気品が求められました。日本では根性論が先行し、徹底的に体を痛めつけるスパルタ式トレーニング法が採用されてきました。このため、不要な筋肉がついて美しいシルエットが出せなくなったり、怪我をしてダンサー生命を絶たれたりということが起こりやすい風土になってしまったものと考えられます。
さて、バレエの基礎を築いた最大の功労者はフランス国王「太陽王」ルイ14世です。「太陽王」の称号の由来についてはバレエにまつわるエピソードがあります。歴史授業では当時のフランスの領土が広大で、その領土には常に太陽が輝いていたから、「太陽王」と呼ばれたと習いました。しかし、これは事実ではありません。「太陽王」はルイ14世が「夜のバレエ」(1653年)という作品の中で“太陽の役”を踊ったためにつけられた称号なのです。当時のフランスではバレエを上手に踊ることができれば王に近づき権力を手に入れるチャンスがありました。このため、その当時バレエを踊るのはほとんどが男性でした。しかし、ルイ14世の現役引退後はバレエと権力の結びつきが希薄になったため、王侯貴族のダンサーは少なくなり、職業としてのダンサー、女性ダンサーが多くなってくるのです。ルイ14世はバレエの5つの基本ポジションを体系化し王立バレエ学校(パリオペラ座バレエ学校)を創設しました。男性ダンサーの全盛時代には足を出すダンサーは男性ダンサーだけで、女性はロングドレスを着て踊り、ほとんど足先しかみえなかったようです。職業女性ダンサーの時代になると男性ダンサーに引けを取らないテクニックを持った女性ダンサーがバレエを進化させ、美しい足先を見せるため、女性ダンサーは衣装の丈を短くしてゆきました。これがチュチュという衣装です。バレエの代名詞トウシューズは足を美しく見せるためのみならず、宙を浮く妖精を表現するために発達してきました。トウシューズテクニックの完成はロマンティック・バレエの扉を開けたのです。ロマンティック・バレエではロマン主義の影響で感性や想像力を重視し、妖精や亡霊などのこの世のものではない存在を描こうとしました。ロマンティック・バレエの代表作が「ラ・シルフィード」(1832年)や「ジゼル」(1841年)です。この頃がバレエ体系の完成期と言われています。
皆さんもバレエコンサートに出かけてみませんか?
→ 宗像靖彦クリニックでは、バレエダンサーの医学管理・コンサルテーションを行っております。
病気いろいろシェーグレン症候群の難病指定について2015.02.01
① 難病への医療費助成
1) 原因不明の
2) 希な病気で
3) 有効な治療方法が無いために
4) 生活への長期的な支援を必要とする
以上の4条件を満たす特定の疾患を厚生労働省が指定し、医療費の助成(特定疾患医療費助成制度)を行っています。このような公費助成制度は、世界にも類が無く、日本の医療福祉政策が大変手厚いものであることを示すとともに、国民が一丸となって患者さんを守ろうとする日本国民の思いやりの深さを示す制度と言えます。
平成27年1月1日から特定疾患医療費助成制度対象疾患が56疾患から110疾病に拡大され、シェーグレン症候群もその対象に指定されました。
② 医療費助成対象となるシェーグレン症候群の病態について
シェーグレン症候群の患者さんすべてが医療費助成の対象になるわけではありません。今回の制度改正に伴った医療費助成対象は、ヨーロッパリウマチ学会の策定したシェーグレン症候群の活動性指標の評価で「重症」に分類される患者さんが対象となります。
この活動性指標でのチェック項目は、健康状態・リンパ節腫脹・腺症状・関節症状・皮膚症状・肺病変・腎病変・筋症状・末梢神経障害・中枢神経障害・血液障害・生物学的所見(血液中免疫蛋白の検査)の12項目について、スコアをつけて計算し、一定の基準を上回った患者さんが重症として分類され、医療費助成対象となります。
③ 重症シェーグレン症候群患者さんの認定について医療機関でお手伝いできること
1) 厚生労働省研究班の策定した診断基準(1999年策定)への合致を確認します。以下の検査が必要となります。
① 眼科での検査
② 耳鼻咽喉科または歯科での検査
③ 血液検査
2) 1)でシェーグレン症候群の診断を受けた患者さんを対象にヨーロッパリウマチ学会の策定したシェーグレン症候群の活動性指標を評価します。以下の検査が必要となります。
① 一般診察(血液検査・尿検査・レントゲン検査など)
② 皮膚科での診察(皮膚生検など)
③ 呼吸器科での診察(肺CT検査・呼吸機能検査など)
④ 腎臓内科での診察(腎生検など)
⑤ 神経内科での診察(筋電図検査・神経伝導速度検査・MRI検査など)
3) 2)で重症に分類された患者さんに対して臨床調査個人票を作製し県に提出して判定を待ちます。
バレエ2015年 新春対談 2015.01.01
宗像靖彦クリニック顧問 山野博大先生(舞踊評論家)に聞く
大切にしたい踊る人のからだ
――日本のバレエの歴史はどのくらいになるのですか。
山野博大◆ 1911(大正1)年に日本初めての洋式劇場の帝劇が建ち、そこへローシーというイタリア人がやって来て日本人にバレエを教えたのが始まりです。だから日本の洋舞の歴史は、約100年というところです。私はその日本に入ってきた洋舞を半世紀以上も見続けてきました。橘秋子、松尾明美、友井唯起子、谷桃子、貝谷八百子、松山樹子、笹田繁子、太刀川瑠璃子、牧阿佐美、松本道子、須永晶子、小林紀子、岡本佳津子、大原永子ら、日本バレエの歴史に名前を残した人たちの舞台姿が懐かしいです。
――そういう日本バレエの昔のスターたちの踊りはどんなだったのですか。
山野◆ 多くは脚の故障を抱えていました。日本の古典芸能は、からだを痛めつけることで芸を身につけるスパルタ式訓練を基礎にして伝えられてきました。20世紀になって日本に入ってきたバレエにも、その影響は及んでいて、みんなその試練に耐えてスターの座を目指したのです。そういうわけで、どうしても腿やふくらはぎの筋肉が目立ち、きれいと言うよりはたくましいと言った方が適切なからだつきの人たちが多かったと思います。トーシューズの履き方も自己流で、外反母趾はあたりまえ。脚の故障を押して舞台に立つ人も多かったのです。
――欧米のバレエと違った歴史をたどってきたんですね。
山野◆ クラシック・バレエの中心に存在するお姫様は、きれいで品が良いことが第一ですから、からだに苦しい訓練の跡が残っていてはいけないのです。まず美しいからだを作り、それをたくみにコントロールする方法を身につけるための教育が、ルイ14世が創立したパリ・オペラ座のバレエ学校以来、ずっと行われてきました。スパルタ式の訓練は行われたことはありません。
――日本のバレエ界がその違いに気付いたのは……?
山野◆ 1960(昭和35)年にチャイコフスキー記念東京バレエ学校が設立され、メッセレル女史が来日してロシア式のバレエ・テクニックを教えるようになってからですね。そこから日本のバレエ教育は大きく変わりました。日本の経済力が強くなったことがベースとなって、トーシューズを製造する技術も飛躍的に向上しました。それにつれてバレリーナの脚がだんだんきれいになってきたのです。
――バレリーナの脚に対する医学的な面からのフォローは、どうだったんでしょうか。
山野◆ お父さんがお医者さんというバレリーナがいました。そういう人たちは、脚を大事にする意識をいくらかは持っていたと思うのです。しかし専門的な知識を身につけたお医者さんは、まだとても少ないのが実情です。今年の私の仕事はじめは、一月に東京で行われた“NBAバレエコンペティション”の審査でした。そこに登場したダンサーたちの脚は、半世紀前とは比べものにならない美しさでした。しかし、中にはまだスパルタ式訓練を思わせる、腿やふくらはぎの筋肉が目立つ人もちらほら見えました。
――バレエ先進国の欧米との違いがまだまだあるんですね。
山野◆ 向こうのバレエは400年以上の歴史を持っているので、なかなかその差はかんたんには埋められないと思います。しかし日本人ダンサーが世界の多くのバレエ団で活躍しています。脚を大事にしなければいけないという意識は、かなり広まってきています。そういう意味から、踊る人のための宗像クリニックが身近にある仙台の舞踊家たちは幸せですね。
――その他、何かありましたら。
山野◆ 戦前からの歴史を持つ日本の現代舞踊の人たちは、からだを痛めつけることで芸を身につけた日本の古典芸能に似たかたちのトレーニングを受け継いでいます。まだ脚を大事にする意識はかなり薄いように思います。また最近はやりのコンテンポラリー・ダンスは、無理なからだの動きを使った新しい表現を目指す傾向が強いこと、それに対する肉体的な保護措置が追いついていないのが実情です。どうしても怪我人が多く出てしまいます。ダンサーにとってからだはかけがえのない財産ですから、くれぐれも大事に使って、活躍してもらいたいと思います。
慢性疼痛線維筋痛症の痛みについて2014.09.29
最近、米国リウマチ学会のジャーナルに、線維筋痛症の痛みに関する論文が発表されました。
線維筋痛症の患者さんに特殊な方法でMRI検査を行ったところ、痛みとは関係ない「視覚情報」や「聴覚情報」でも、線維筋痛症の患者さんの脳は「痛み」と感じてしまうようです。
「視覚情報」や「聴覚情報」をインプットすれば、通常は脳の視覚領域や聴覚領域が活動をするはずですが、線維筋痛症の患者さんの脳では、むしろ視覚領域や聴覚領域の活動が思ったほど上がらず、そのかわりに「島」という側頭葉の奥にある領域が活性化してしまうようです。
「島」は情動に関連した領域で、痛みの体験や喜怒哀楽や不快感、恐怖などの基礎的な感情の体験に重要な役割を持つと考えられています。
線維筋痛症の患者さんの脳では、感覚情報の統合障害がある可能性を示唆しています。
病気いろいろマイヤーズカクテルについて2014.04.01
当院では、代替医療として「マイヤーズカクテル療法」を行っておりますが、「マイヤーズカクテルって何?」という質問をよくうかがいます。
米国の医師ジョン・マイヤーズは自分のもとに訪れる体調の悪い患者さんにビタミン・ミネラルを大量に含む「マイヤーズカクテル」の注射を行っていました。患者さんの状態に対しての満足度が向上し、その治療法が評判となりました。残念ながら、マイヤーズ先生のカクテル「レシピ」は先生の死後、不明となってしまいましたが、アラン・ガービー医師の調査研究によって「マイヤーズカクテル」が復活しました。現在、私たちが患者様に提供している「マイヤーズカクテル」はガービー先生のレシピに基づき、それぞれの施設で調整したものです。
マイヤーズカクテルにはビタミンB群・ビタミンC・マグネシウム・カルシウムが含まれています。ガービー先生はおおよそ15,000人の患者さんにマイヤーズカクテルを投与したとされております。患者さんの病態は、喘息、偏頭痛、全身疲労、線維筋痛症などの慢性疼痛、筋肉疲労や痙攣、風邪、花粉症、抑うつ状態などの精神不安定などだったようです。
マイヤーズカクテルの副作用の多くは、マグネシウムによる熱感、血圧低下です。しかし、これらの副作用は投与スピードの速い注射で生じます。当院では点滴でゆっくり投与しますので、副作用はほとんどありません。
マイヤーズカクテル療法の効果に関する評価はまだ定まっていないというのが現状です。線維筋痛症に対しての有効性では、有効とする報告もあれば有効性が示されなかったという報告もあります。少なくとも一部の患者さんに対しては好ましい効果が得られる可能性があると解釈することができるようです。