ムナクリ通信

リウマチのムナクリ通信一覧

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リウマチリウマチの治療費は高い?2019.07.26

リウマチの治療費は高い?

 遺伝子組み換え技術の進歩によって、関節リウマチの炎症を引き起こす炎症蛋白を直接的に抑え込む生物学的製剤が開発されました。これによって、関節リウマチ治療は飛躍的に進歩しました。しかし、気になるのはそのお値段。決して安くはありません。

 関節リウマチ治療の目標は病気の勢いを完全に抑え込んで、進行を止め、可能であれば、治療をやめても再発しないことです。実際に治療をやめても関節リウマチが悪化したり、再発したりしないようにすることが本当にできるのでしょうか?
残念ながら、この質問に対しての答えはまだ出ていません。しかし、生物学的製剤の登場によって実際に治療をやめても悪化したり再発したりしない患者さんもたくさん見られるようになりました。

 関節リウマチの治療をやめても関節リウマチが悪化したり再発したりしない患者さんの大半に共通することは、「関節リウマチを早く発見し、早くから生物学的製剤の治療をした」ということです。関節リウマチの治療が不十分だと、合併症の併発や寿命にも影響が出ることを考えれば、生物学的製剤による治療費は高額ですが、メリットが大きいのも事実のようです。

 当院が参加しているNPO法人トータルケアの調べによると、生物学的製剤で治療を受けている患者さんでは、生物学的製剤による治療効果が確定し、治療効果が実感できると、治療継続にあたって、生物学的製剤による治療費の要素は問題ではなくなってくるといった成績が出ています(図1)。決して安くはない関節リウマチの治療費用ですが、治療を開始してその効果が実感できて日常生活の快適さが増すことで、治療費用以上の満足感が得られることを裏付けているものと解釈できます。

図1

 では、実際の治療費はどうなっているのでしょうか?2014年4月現在での一ヶ月にかかるおおよそのお薬代を図2に示します。この金額は医療保険適応済みの金額で、実際に患者さんにお支払いいただくお薬代です。生物学的製剤の場合(図2-2)、どの製剤も年間おおよそ50万円(3割負担の場合)・15万円(1割負担の場合)程度となります。この負担は家計にとってかなりの出費だと思います。

図2
図2

しかし、図1に示したように、生物学的製剤使用前は、家計への負担を配慮して、生物学的製剤の半量投与から開始された患者さんたちの大半は更なる効果を期待して、通常投与を希望されている実態があります。このことは、生物学的製剤の効果が実感できると、生活の質が向上し、生産性も増大することから家計への負担を克服できるようになるのではないかと思われます。

 日本の医療制度の中では医療費そのものが低価格に抑えられていることから、生物学的製剤の費用負担は突出して高額と見られがちですが、十分な費用対効果を望むことのできる治療方法であることを考えれば、決して高い治療手段とは言えないのではないかと考えられます。

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リウマチ関節リウマチと妊娠について2018.01.04

関節リウマチの発見が早くなるにつれて、「妊娠」について考慮しなければならないことが多くなってきています。
一般的に関節リウマチは妊娠による免疫寛容(プロゲステロンによる抗炎症作用などによると考えられています)で改善の傾向をとることが多いと考えられています。しかし、病勢が強いままで妊娠しても大きな改善が得られるわけではありません。また、出産後は悪化する可能性が高いことから、妊娠前の十分な病勢コントロールが大切です。

関節リウマチの病勢コントロールには治療薬が必須ですが、「妊娠」に際しては、治療薬の調節が必要です。しかし、ここで難しいのは、治療薬を調節するための絶対的な根拠が無いことです。関節リウマチ治療薬の母体や胎児に対する有害事象は、動物実験の成績に基づいた判断と、これまでの偶発的な出来事(たまたま該当薬剤を服用したまま妊娠してしまったなど)の積み重ねから得られた少数例の統計成績から判断されるため、必ずしも絶対事実ではありません。例えば、メトトレキサートは添付文書上のルールとして妊娠可能性のある患者さんには絶対禁忌となっており、妊娠前の服用中止が推奨されています。しかし、少数例の偶発的統計では、妊娠判明時(妊娠数週)まで服用していても、奇形の発生確率を高めないとの報告もあります。とは言え、少なくとも、胎児の奇形リスクにかかわる妊娠4~16週では催奇形性を有する薬剤の体内濃度はゼロにしておく必要があります。これに該当する薬剤が、メトトレキサート(リウマトレックスなど)とレフルノミド(アラバなど)です。反対に、妊娠中の投与について絶対禁忌とされていない治療薬がスルファサラジン(アザルフィジンなど)です。副腎皮質ステロイドホルモンについては、胎盤透過性の比較的少ない(約10%)プレドニゾロンを使います。

生物学的製剤についてはどうでしょうか?添付文書上は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ生物学的製剤の投与が可能(慎重投与)とされていますが、開発後の市販実績の多い抗TNFα製剤を使用することが多いのが現状です。
関節リウマチ治療中または治療開始予定の患者さんで妊娠を希望する患者さんに対しては、妊娠に至るまでの治療計画が必要です。「いつ」妊娠したいのか、ご自身の希望を治療担当医にはっきり伝えるようにしてください。担当医が妊娠希望患者さんの治療計画を立てる上でのポイントは「妊娠希望期限までにメトトレキサートやレフルノミドを使用しない状況下で寛解状態に導入すること」です。

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リウマチ関節リウマチと喫煙について(2)2018.01.03

関節リウマチの発症と喫煙について、ちょっと詳しく説明しましょう。

関節リウマチ診断の指標で抗CCP抗体という検査があります。これは抗環状シトルリン化抗体というたんぱく質です。この抗体は関節リウマチとの特異度が90%以上を示す検査で、特に関節リウマチの関節破壊の重症度とかかわるたんぱく質と考えられています。つまり、抗CCP抗体陽性の方は、90%以上の確度で関節リウマチに罹患していると言っても過言ではなく、しかも、関節破壊の激しい、質の悪い関節リウマチを患っていることが推定されるのです。

一方、関節リウマチではその発症に白血球の型(HLA)が関与していると言われています。赤血球の型は、ABO式の型分類がありますが、白血球にもHLAと言われる型が分類されています。関節リウマチではHLA-DRたんぱくを構成するアミノ酸に共通の配列が検出される傾向があると言われ、この共通の配列がシェアドエピトープと称されています。

喫煙犯人説における有力な仮説では、たばこの毒性により肺内でシトルリン化たんぱくが出現し、抗CCP抗体が誘導されるとされています。実際、HLA-DRにシェアドエピトープを持っている患者さんでは、喫煙者で抗CCP抗体陽性者が多く、なおかつ重症例が多いことが証明されています。

関節リウマチのすべてが喫煙で発症するということではありませんが、喫煙が体内で関節リウマチ発症の中心的な役割を担っていることはほぼ確定的です。このようなたとえ話がわかりやすいかも知れません。シェアードエピトープを持っている方は、「関節リウマチ号という自家用車」を持っているのですが、車は持っているだけでは走りません。喫煙という「エンジンキー」を入れることによって、抗CCP抗体という「アクセルペダル」を踏み、さらに喫煙でアクセルペダルを強く踏み込むことになるのです。かくして関節リウマチ号はトップスピードで走行してゆくのです。

関節リウマチに罹患している、喫煙患者さんは、即刻、喫煙をやめなければなりません。これは自分だけの問題ではありません。副流煙により他人の自家用車のエンジンキーを回してしまっている可能性があるのです。関節リウマチにおける喫煙は医学的問題を超えて、人としての理性や道徳性といった人間性の問題なのです。

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リウマチリウマチ友の会講演会要旨 「国家存亡をかけた医療サービス」2017.11.01

I)日本の医療制度の危機的状況について

 わが国では少子高齢化に伴い医療制度の根幹が揺らいでいます。日本の国家予算は年間97兆円ですが、年間の医療費は42兆円に膨らんでいます。国家事業として国民皆保険制度を施行していますが、この制度は「おたがいさま」という互助の精神に基づいた制度です。保険料を納めてもそれを使わない健康な納税者がたくさんいることで成立しています。日本の医療費の53%は70歳以上の高齢者の医療費として支出されています。この医療費の捻出に貢献しているのが、「納める保険料>支出する医療費」を実践している20歳~60歳の国民です。日本の人口ピラミッドは釣り鐘型を呈しており、今後、高齢者の医療費を支える20歳~60歳の就労人口が減ってきます。現在のような質の高い医療サービスを制度として維持することは、たとえ消費税を増税したとしても不可能な状況です。つまり、保険料徴収額を増やすこと(納税者を増やすか納税額を増やすかということ)のみならず、医療費の支出を防ぐことも行ってゆく必要があるのです。日本の医療制度崩壊を防ぐ唯一の方法は、医療費支出を可能な限り抑えながら、国力を蓄え、200年かけて人口ピラミッドを適正化してゆくこと以外道はないのです。

II) 日本の医療実態

 現在の日本の医療実態をチェックしてみます。日本人の平均寿命は平成25年の調査で女性が86歳、男性が80歳です。一方、自立して生活できる「健康寿命」はどうでしょうか?女性が74歳、男性が71歳です。つまり、日本人の晩年10年間は介護を必要とする人生になってしまうのです。当然、認知症や寝たきりが多くなります。全世界を見渡しても、平均寿命と健康寿命のギャップについては、日本は群を抜いて大きい国なのです。ちなみにアメリカでは平均寿命と健康寿命のギャップは8年、ドイツは7年、高福祉国家ノルウェーも7年です。前項で述べたように、日本の医療費は70歳以上の高齢者に53%が支出されています。医療費の大半はこのギャップ、すなわち健康寿命を維持できなくなった期間に出動されているのです。日本の医療費出動実態から見ると、寝たきり状態になった後に支出される事後処理型医療とも言えます。

 次に、日本人の死亡原因を調べてみましょう。昭和20年代の死亡原因の第一位は結核でした。幸いなことに、抗生剤の登場で、死に至る病だった結核を克服することができました。そして現在の死亡原因上位は、癌、心疾患、脳血管疾患、肺炎です。癌は人体を構成する細胞の細胞分裂ミスコピーから発生します。生物であれば、細胞分裂のミスコピー蓄積は避けられません。癌死は「生物死」として加齢とともに増加することは統計上必然的なリスクとみなされます。心疾患・脳血管疾患は高血圧症や糖尿病などの生活習慣病を基盤に発生します。これらのリスクは現代の医療で克服しなければなりません。肺炎は寝たきりや誤嚥で発生し、死に至ります。寝たきり状態の原因は、脳血管疾患・筋力低下・骨粗しょう症・関節リウマチ・認知症であることがわかっています。これも克服しなければなりません。このように見てくると、生活習慣病の改善や、寝たきり状態にならないようにすることで、健康寿命延長が担保され、平均寿命とのギャップが埋まってくるであろうということがわかります。

 70歳以上の高齢者に対して出動する莫大な医療費の芽は、生活習慣病によって膨らんでゆくのです。ということは、この芽は、「納める保険料>支出する医療費」を実践し日本の医療制度を支えている20歳~60歳の世代のうちにすでに発芽しているのです。65歳以上の国民における医療費出動の36%は循環器系疾患、10%はリウマチ・骨粗しょう症などの筋骨格系疾患で、事後処理型医療であることを反映しているようです。この中で、さらに、医療費高騰の真犯人を突き止める必要があります。日本の保険制度は医療費出動を抑えるために、毎年、様々な改定が行われています。その結果、医療機関に支給される医療費は年々減少しています。医療機関は身を削って、日本の医療制度を支えているのに、どうして医療費が抑制されないのでしょうか?実は、医療費高騰の真犯人は製薬会社に支払われる「薬剤費」なのです。国が「ジェネリック医薬品」を推奨するのはこのためです。

 重ねて強調しますが、日本の医療実態は、病気になってから手厚く治療する事後処理型医療なのです。この制度は、病気になっても安心して質の高い医療を受けることができるというのが特徴です。しかし、私たちは病気にならないことのほうがより貴重で価値があることなのだということに気づく必要があります。健康であるためにどうしたらよいのかを個人個人が考え、実践してゆくことが私たち国民の義務なのです。

III)価値観を見直す~健康寿命120歳プロジェクト~

 日本の医療制度崩壊を防ぐ唯一の方法は「元気で長生き(医療費を使わない)、社会貢献(所得増加による納税)できる高齢者を増加させる」こと以外にありません。長生きの目標は人間としての生物学的寿命120歳です。人間の細胞分裂ミスコピーの蓄積は120歳までに癌を発生させると計算されています。まずは、ここまで、元気で生き抜く覚悟を持つ必要があります。生活習慣病、寝たきり状態(脳血管疾患・筋力低下・骨粗しょう症・リウマチ・認知症)を予防または克服する必要があります。まずは生活習慣を見直しましょう。生活習慣病を誘発する過食、筋力低下を誘発する運動不足を避けることが第一歩です。「食事」と「運動」に有効な自己投資をしてください。病気から身を守るための予防は国の医療制度が支えてくれるものではありません。自己努力が必要です。添加物の多い食品を避け、多少値段が高くても旬のもの、良いものを選んで、食べましょう。腹八分を超えてはいけません。運動する機会を作りましょう。スポーツクラブやジム、パーソナルトレーニングなど、必要であれば積極的にお金を使うべきです。このような意見は贅沢と解釈されるかもしれません。しかし、日本人の消費行動調査統計によると、節約したくない家計費の第一位がレジャー・娯楽費、第二位が食品・飲料費、第三位が交際費、第四位が医療費となっています。健康への投資が後回しになる傾向が見えます。また、日本の医療費は42兆円ですが、娯楽費には65兆円、葬儀費には20兆円が費やされ、国民の財布から直接支出されています。娯楽などの瞬時の悦楽や死んだ後のセレモニーに、多くの費用が支出されているというのが、現在の日本の実態なのです。お金の使い方は、個人の価値観の問題ではありますが、このような現状の下で日本の医療費が高いという議論が成立するのか、疑いたくなる出費メンタリティーではないでしょうか?ちなみに、東日本大震災後に仙台で開催された「嵐」のコンサート、経済効果は93億円だったそうです。

 現代の日本人には豊かさがあります。個人個人の価値観を見直し、事後処理型医療制度に依存しないで、疾病予防に投資してゆくことに大きな価値を見出してゆくことが必要です。そして「病気にならないぞ。寝たきりにならないぞ。そのために自分への投資をするぞ。」という考え方が、文化あるいは習慣として根差せば、少子高齢化に伴った医療制度崩壊リスクは回避できると考えられます。120歳まで元気で長生きする。そして社会貢献をする。このことがたわごとや空想ではなく、常識的な目標として認知されることを目指してゆきたいと思っています。

IV) 関節リウマチ治療における「健康寿命120歳プロジェクト」

 関節リウマチの治療は発症早期に適切な治療介入をすることで、生命予後や機能的予後を劇的に改善させることができるようになっています。当院に通院中の関節リウマチ患者さんの年齢層ピークは50歳代ですが、患者さんのリウマチ発症年齢はもっと若い時期だったはずです。患者さんの社会貢献機会喪失を防ぐためには発症から診断までの時間的ロスをなくす必要があります。そこで、当院に通院する40歳以下のリウマチ患者さん102名のアンケート協力をいただき、当院受診までのプロファイルを分析してみました。

【患者さんのプロファイル】
20歳代後半で関節痛を自覚。関節リウマチという病名のイメージは無く、一時的な腱鞘炎と思う。症状出現から半年以内には、整形外科または整骨院を受診している。この時期には関節リウマチの診断には至っていない。定期的受診はせずに、症状の悪化などに合わせてたびたび受診していた。関節症状の改善が無いため、たまたま当院の連携医療機関を受診。関節リウマチ疑いとなり、当院への紹介を受けて当院受診に至る。初めの症状発生から当院受診までに約10年を要している。

関節リウマチは、患者さんの社会貢献機会を低下させ、健康寿命へのリスクになります。患者さんは症状を自覚後、比較的早い時期に医療機関を受診していました。当院受診までのおおよそ10年間はある程度の関節症状を抱え、社会参加の満足度は低かったと推定されます。この10年の喪失を無くすための今後の対策として、患者さんが最初に受診する地元の整形外科や整骨院と緊密な連携を構築し、リウマチの診断時期と治療介入時期を早めてゆくことに努力したいと思っています。

皆さんも、子どもたちに託せる日本を創るため「健康寿命120歳プロジェクト」に参加してみましょう。

リウマチ関節リウマチの早期発見2017.10.02

関節リウマチは全身の関節炎がおこり、関節の障害から身体機能がおかされてゆきます。のみならず、肺や腎臓などの内臓障害や狭心症・心筋梗塞、癌・リンパ腫などの悪性腫瘍のリスクになることが知られています。リウマチは健康寿命を縮める病気です。このため、リウマチは早期に発見して適切な治療を早期に開始する必要があるのです。リウマチの治療に携わる医療者としては、リウマチ発症早期の患者さんに対する治療を適切に行い、患者さんの生活クオリティを落とすことなく社会参加をしていただくことが、最大の社会的責務です。

このような意味で当院の診療パフォーマンスは、最大限の社会貢献をしているのでしょうか?以前、述べたように、関節リウマチの発症年代のピークは40歳代にあります。ところが、当院を受診中の患者さんの年代ピークは50歳代にあり、30・40歳代はむしろ少ないのが実情です。この結果を受けて思うのは、患者さんが当院を受診するまでのどこかに早期発見早期治療を阻む原因が潜んでいるのではないか?ということです。

そこで、現在当院受診中の40歳以下の患者さんにアンケートのご協力をいただき、この疑問点を検証してみました。アンケートは本年4月末日までに当院に在籍する126名の40歳以下のリウマチ患者さんを対象としました。102名の患者さん(回収率81%)にご協力いただきました。年齢、性別の内訳は以下の通りです。

▼まず初めに、患者さんの当院への受診動機を示します。

受診動機

ホームページを調べるなどして自発的に来院した患者さんはきわめてわずかで、当院連携医療機関からのご紹介やご家族からの勧めなど、背中を押されての受診が多いようです。

▼次に、当院を受診された患者さんの初発症状とその部位を複数回答で調べてみました。

初発症状
部位

関節リウマチの特徴である手足の小関節の痛みのみならず、膝や肩、腰などの比較的大きな関節の痛み症状が初発であることも多いようです。

▼それでは、このような症状をはじめて自覚したのはいつだったのでしょうか?

はじめて自覚

横軸に症状の自覚年齢、縦軸に患者さんの割合を示しています。当院を受診中の40歳以下のリウマチ患者さんの初発は年齢のピークは20歳代後半でした。症状の初発から当院受診までに約10年程度の開きがある可能性が推測されました。

患者さんはこの間にどのような医療機関を受診しているのでしょうか?
▼当院受診までに受診した医療機関について複数回答で調べてみました。

医療機関

症状を自覚して、すぐに第一医療機関として当院を受診した患者さんは極めてわずかで、約8割の患者さんは整形外科を受診しています。当院への患者さんのご紹介が最も多い医療機関が整形外科であること、当院受診までに複数の医療機関を受診している患者さんが多いことを考慮すると、患者さんの医療機関受診プロファイルとして、以下の順番での受診行動が推測されます。
第一医療機関:内科、整骨院、その他の医療機関(整形外科も含む)
第二医療機関:当院連携の整形外科医療機関
第三医療機関:当院

▼症状が発生して医療機関を受診する場合、その症状の原因疾患として何を連想するかによって、受診行動が規定される可能性が高いため、症状発生時にイメージした病名を調べてみました。

イメージした病名

「関節リウマチ」をイメージした患者さんは15%のみでした。「その他」中には、帯状疱疹など内科的な疾患をイメージした患者さんも多く、「たまたま」一過性の症状と思い、症状緩和のみを目的とした受診行動をとるような患者さんも多いようです。患者さんに対して、医療機関やご家族などから、早い段階で「リウマチ」というキーワードがインプットされると、その後の医療機関受診行動において、リウマチの診断・治療に至るまでの時間が短縮される可能性があります。先述したように、現在当院に受診中の40歳以下の患者さんは当院受診に至るまでに約10年を要していることが予測されることから、「関節リウマチ」という疾患イメージのインプット時期は非常に大切な要素となります。

多くの患者さんは「関節リウマチ」というキーワードをイメージしていないことから、発生した症状を軽微に考え、第一医療機関受診までに時間を要するような「ためらい時間」はないのでしょうか?
▼患者さんが第一医療機関を受診するまでの時間を調べてみました。

ためらい時間

多くの患者さんは、はじめての症状発生から半年以内には第一医療機関を訪れていることがわかりました。患者さんが医療機関受診を「ためらう」傾向はなさそうです。ということは、第一医療機関受診から関節リウマチの診断に至るまでに多くの時間を要しているということを示唆しており、医療機関側の診療連携に問題があるという問題が浮かび上がってきます。

当院受診中の40歳以下のリウマチ患者さんから得られたアンケート調査結果から、当院受診に至る行動をプロファイリングすると、以下のように推測されます。

20歳代後半に関節痛を自覚。
リウマチのイメージは全く無く、腱鞘炎など一過性の症状と考え、少なくとも症状自覚後半年以内には市中の医療機関(整形外科や接骨院)を受診している。
この時点では、関節リウマチの診断に至らず、対症療法がおこなわれる。症状の程度に波があり、痛みが強いときのみ医療機関を受診している。
このような繰り返しが約10年間続き、なかなか症状の改善が得られないため、(たまたま?)当院連携の整形外科クリニックを受診。
関節リウマチの疑いにて当院紹介受診。

関節リウマチ治療では、早期発見早期治療が非常に重要です。患者さんに寛解を目指した治療を提供し、社会活動性を高く保っていただくためには、受診行動のプロファイルで推定される、関節リウマチの診断に至るまでの10年間を無くすことが必要です。今後当院では、整骨院との連携、10年間を短縮するための防波堤となりうる整形外科クリニックとの連携を強化してゆく予定です。

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