ムナクリ通信

宗像靖彦クリニックでは、健康生活に必要なあらゆる情報発信をしております。
もっと詳しくお聞きしたい事や、他に知りたい内容などございましたら、スタッフにお伝えください。

関節リウマチの早期発見2017.10.02

関節リウマチは全身の関節炎がおこり、関節の障害から身体機能がおかされてゆきます。のみならず、肺や腎臓などの内臓障害や狭心症・心筋梗塞、癌・リンパ腫などの悪性腫瘍のリスクになることが知られています。リウマチは健康寿命を縮める病気です。このため、リウマチは早期に発見して適切な治療を早期に開始する必要があるのです。リウマチの治療に携わる医療者としては、リウマチ発症早期の患者さんに対する治療を適切に行い、患者さんの生活クオリティを落とすことなく社会参加をしていただくことが、最大の社会的責務です。

このような意味で当院の診療パフォーマンスは、最大限の社会貢献をしているのでしょうか?以前、述べたように、関節リウマチの発症年代のピークは40歳代にあります。ところが、当院を受診中の患者さんの年代ピークは50歳代にあり、30・40歳代はむしろ少ないのが実情です。この結果を受けて思うのは、患者さんが当院を受診するまでのどこかに早期発見早期治療を阻む原因が潜んでいるのではないか?ということです。

そこで、現在当院受診中の40歳以下の患者さんにアンケートのご協力をいただき、この疑問点を検証してみました。アンケートは本年4月末日までに当院に在籍する126名の40歳以下のリウマチ患者さんを対象としました。102名の患者さん(回収率81%)にご協力いただきました。年齢、性別の内訳は以下の通りです。

▼まず初めに、患者さんの当院への受診動機を示します。

受診動機

ホームページを調べるなどして自発的に来院した患者さんはきわめてわずかで、当院連携医療機関からのご紹介やご家族からの勧めなど、背中を押されての受診が多いようです。

▼次に、当院を受診された患者さんの初発症状とその部位を複数回答で調べてみました。

初発症状
部位

関節リウマチの特徴である手足の小関節の痛みのみならず、膝や肩、腰などの比較的大きな関節の痛み症状が初発であることも多いようです。

▼それでは、このような症状をはじめて自覚したのはいつだったのでしょうか?

はじめて自覚

横軸に症状の自覚年齢、縦軸に患者さんの割合を示しています。当院を受診中の40歳以下のリウマチ患者さんの初発は年齢のピークは20歳代後半でした。症状の初発から当院受診までに約10年程度の開きがある可能性が推測されました。

患者さんはこの間にどのような医療機関を受診しているのでしょうか?
▼当院受診までに受診した医療機関について複数回答で調べてみました。

医療機関

症状を自覚して、すぐに第一医療機関として当院を受診した患者さんは極めてわずかで、約8割の患者さんは整形外科を受診しています。当院への患者さんのご紹介が最も多い医療機関が整形外科であること、当院受診までに複数の医療機関を受診している患者さんが多いことを考慮すると、患者さんの医療機関受診プロファイルとして、以下の順番での受診行動が推測されます。
第一医療機関:内科、整骨院、その他の医療機関(整形外科も含む)
第二医療機関:当院連携の整形外科医療機関
第三医療機関:当院

▼症状が発生して医療機関を受診する場合、その症状の原因疾患として何を連想するかによって、受診行動が規定される可能性が高いため、症状発生時にイメージした病名を調べてみました。

イメージした病名

「関節リウマチ」をイメージした患者さんは15%のみでした。「その他」中には、帯状疱疹など内科的な疾患をイメージした患者さんも多く、「たまたま」一過性の症状と思い、症状緩和のみを目的とした受診行動をとるような患者さんも多いようです。患者さんに対して、医療機関やご家族などから、早い段階で「リウマチ」というキーワードがインプットされると、その後の医療機関受診行動において、リウマチの診断・治療に至るまでの時間が短縮される可能性があります。先述したように、現在当院に受診中の40歳以下の患者さんは当院受診に至るまでに約10年を要していることが予測されることから、「関節リウマチ」という疾患イメージのインプット時期は非常に大切な要素となります。

多くの患者さんは「関節リウマチ」というキーワードをイメージしていないことから、発生した症状を軽微に考え、第一医療機関受診までに時間を要するような「ためらい時間」はないのでしょうか?
▼患者さんが第一医療機関を受診するまでの時間を調べてみました。

ためらい時間

多くの患者さんは、はじめての症状発生から半年以内には第一医療機関を訪れていることがわかりました。患者さんが医療機関受診を「ためらう」傾向はなさそうです。ということは、第一医療機関受診から関節リウマチの診断に至るまでに多くの時間を要しているということを示唆しており、医療機関側の診療連携に問題があるという問題が浮かび上がってきます。

当院受診中の40歳以下のリウマチ患者さんから得られたアンケート調査結果から、当院受診に至る行動をプロファイリングすると、以下のように推測されます。

20歳代後半に関節痛を自覚。
リウマチのイメージは全く無く、腱鞘炎など一過性の症状と考え、少なくとも症状自覚後半年以内には市中の医療機関(整形外科や接骨院)を受診している。
この時点では、関節リウマチの診断に至らず、対症療法がおこなわれる。症状の程度に波があり、痛みが強いときのみ医療機関を受診している。
このような繰り返しが約10年間続き、なかなか症状の改善が得られないため、(たまたま?)当院連携の整形外科クリニックを受診。
関節リウマチの疑いにて当院紹介受診。

関節リウマチ治療では、早期発見早期治療が非常に重要です。患者さんに寛解を目指した治療を提供し、社会活動性を高く保っていただくためには、受診行動のプロファイルで推定される、関節リウマチの診断に至るまでの10年間を無くすことが必要です。今後当院では、整骨院との連携、10年間を短縮するための防波堤となりうる整形外科クリニックとの連携を強化してゆく予定です。

リウマチの治療について詳細はこちら

当院初診関節リウマチ患者さんの年齢分布2017.04.01

当院では、関節リウマチ患者さんの早期発見・早期治療に力を入れています。開院後4年を経過した時点で、関節リウマチの早期診断ができているのか調べてみました。下の表では当院を初診で受診した関節リウマチ患者さんの年齢分布を開院当初3ヶ月・開院4年目の一年間そして全国平均と比較しています。グラフの横軸は年齢、縦軸は%です。

当院を初診で受診した関節リウマチ患者さんの年齢分布

全国平均(緑)では、若年層に多くの分布が認められ、40歳台に発病のピークがあります。当院開院当初の3ヶ月間の年齢分布(青)では60歳台にピークを示していましたが、開院4年目(赤)では診断のピークが50歳台にシフトしてきており、開院当初よりは早期診断が可能になってきている傾向がうかがわれます。関節リウマチの治療では、治療開始が遅れると関節破壊が進行し、治療効果も得られにくくなりますので、発症早期からの治療が大切になってきます。当院では、発症してある程度時間が経ってしまった患者さんの初診がまだまだ多い傾向が続いています。早期発見・早期治療で患者さんの社会参加率・社会復帰率を高めることに貢献してゆきたいと思っています。50歳未満で関節リウマチを発症する患者さんにしっかりと医療提供ができるような取り組みをしてゆく必要があります。

クリニックにおける医療費支払い方法について2017.03.01

~クレジットカードの必要性~

クレジットカード

関節リウマチの治療では、高額な生物学的製剤の登場によってクリニックや薬局で大きな金額の医療費支払いをしなければならないことが多くなってきています。現金を持ち歩かず支払い決済ができるクレジットカードの有用性が推定されます。実際、入院費用のクレジットカード決済が可能な医療機関は増加しています。同様に外来診療でもクレジットカード決済方式の需要は高いのでしょうか?当院連携薬局から興味深いアンケート調査結果が出されました。調査薬局から許可を得て、調査結果を掲載します。調査薬局を利用する患者さんを対象とした結果です。

① クレジットカードの所有状況
クレジットカードを持っている   82%
クレジットカードを持っていない  18%
*クレジットカード普及率は思ったより少ないと思いました。

② クレジットカード決済希望状況
希望する    45%
希望しない   36%
どちらでもよい 19%
 *クレジットカード決済希望者はあまり多くないようです。

③ クレジットカード決済希望金額
5000円以上   25%
10000円以上  16%
20000円以上  11%
金額にかかわらず 48%
 *クレジットカード決済希望者は窓口支払額に依存していません。

外来診療でのクレジットカード決済需要は大きくありませんでした。

医療費の適正化を目的とした診療様式について2017.02.01

~当院の取り組み~

ballesinsyun

一人当たりの医療費は、以下の式で構成されます。
「一人当たりの件数」x「一件当たりの日数」x「一日当たりの診療費」

① 一人当たりの件数:一人の患者が受診した医療機関の数
② 一件当たりの日数:一人の患者が同一の医療機関に通った日数
③ 一日当たりの診療費:一人の患者さんにかかった医療費用

健康意識の個人差は大きいため、患者さんの医療機関への依存度もまちまちです。些細な症状でも大いに気にかかってしまう方は、多くの医療機関に頻繁に受診し、その都度検査、投薬を受けるため、上記の①②③のいずれも大きくなります。このため莫大な医療費がかかることになります。日本の医療制度では、フリーアクセス(患者さんはどの医療機関にも自由に受診できる)の権利が保障されていることから、①は患者の意識に大きく依存しています。③は治療に関連する要素であるため、医療機関に大きく依存しています。②は健康管理・病気管理について患者さんと医療機関との認識の一致性に依存しています。受診している医療機関でしっかり分析された健康管理方法・病気管理方法を患者さんが理解し、信頼できるようであれば小さくなります。医療機関における分析が不十分で、管理方法に妥当性や信頼性が乏しい場合は大きくなります。②については患者さんと医療機関の共同作業で小さくすることが可能な要素なのです。
日本における受診日数は、下に示すように先進国の中でもかなり多いのです。国民の健康意識が「予防」・「自己管理」の方向に向かうことで、日本でもこの要素を少なくしてゆくことが可能となります。

【受診日数の各国比較(国民一人当たりの年間平均受診回数)】
日本      21
アメリカ     5.3
イギリス     4.8
フランス     5.2
スウェーデン   2.7

そもそも、社会参加を阻害する病気にはならないことが普通でなければなりません。ところが、現代の日本では病気になったら手厚く治療することが普通になってきつつあります。つまり、病気になることが前提の医療体制なのです。超高齢化を迎えた現代において、我々日本国民は普段から病気予防に努め、不幸にして病気になってしまったら、医療機関の指導のもとで、社会参加を目的に徹底した「病気管理」「健康管理」を行って行くことを常識としてゆく必要があります。このような発想の転換が実現してゆけば、「受診日数の低下」がその指標となってきます。
当院では、平成28年4月より予約診療の様式を「完全予約制」から「管理予約制」に変更しました。「管理予約制」では治療や検査など、医学的管理の上で来院が必須な患者さんにのみを予約適応としました。また、同一傷病名での複数医療機関受診(重複診療)をなくすため、連携医療機関との連携強化(患者さん診療情報の提供や紹介)に注力しました。これらの診療様式改善によって、患者さんの受診回数の適正化が得られてきています。

【当院再来患者さんの一カ月ごとの来院回数の変化】
平成28年1月~3月(完全予約制)
 再来患者さんの延べ人数 6,282名
 1回来院 3,844名
 2回来院 827名
 3回来院 156名
 4回来院 56名
 5回以上 18名
平成28年10月~12月(管理予約制)
 再来患者さんの延べ人数 5,150名(18%減少)
 1回来院 3,631名(6%減少)
 2回来院 506名(39%減少)
 3回来院 102名(35%減少)
 4回来院 36名(36%減少)
 5回以上 11名(39%減少)

【当院受診患者さんの連携医療機関へのご紹介数の変化】
平成28年1月~3月(完全予約制)
 再来患者さんの延べ人数 6,282名
 紹介数 194名
平成28年10月~12月(管理予約制)
 再来患者さんの延べ人数 5,150名(18%減少)
 紹介数 254名(31%増加)

 医療を必要とする患者さんに適正な医療を行うために当院では今後も「管理予約制」を継続してゆきますが、緊急の患者さんへの対応に機敏性を欠くといった弊害も懸念されてきています。今後、「管理予約制」を軸とした更なる診療様式の変更適正化を提案してゆく予定です。

社会満足度追求型医療サービスの構築2017.01.01

           平成29年年頭のご挨拶

あけましておめでとうございます。新春を迎え、ご挨拶を申し上げます。
超高齢化社会を迎え、税収が伸びず、社会保障費が増大する傾向が加速しています。これに伴って我が国の社会保障制度は変革を余儀なくされています。しかし、変革の方向性は定まらず不安定要素が増してきています。日本の医療サービスは世界にも類を見ないほど充実した質・量を提供しています。これまでは「すべて」の国民に対して「先進的な医療」が「安価」に提供されていました。現在の国内状況を踏まえると、今後はこれら「すべて」・「先進的な医療」・「安価」の三点についての変更が必要となります。すなわち、この三点がすべて揃うことが不可能となり、この内の一点以上を修正しなければならなくなります。現在検討されている高齢者への医療費自己負担額増加は「安価」要件についての受益放棄をお願いする施策となります。しかし、「安価」に対しての政策変更は高齢者の生活保護受給者増加を誘発しかねません。国民皆保険制度が浸透した我が国において、上記の三点に直接変更を加える政策は、様々な方面にしわ寄せを招くことから妥協的かつ段階的な応急処置政策としての位置付けになります。決して根本的な解決にはなりません。そもそも、我が国の医療サービスは、病気になった後に手厚いサービスを提供する事後処理型医療です。言い換えれば、「安心して病気になることのできる」サービスです。これからの我が国に必要な医療サービスは「健康維持型」の事前介入型医療サービスです。医療・介護適応人口を減少させる社会保障制度に制度目的を変更してゆく必要があり、その社会モデルを示してゆく必要があるのです。
当院では、「120歳まで健康」を目標とした健康管理サービスの事業モデル追及をしてゆきます。これによって、患者満足度の向上(健康時間の延長、社会貢献の維持)、更には社会満足度の向上(社会保障費の削減、税収の増加)が得られます。この事業モデルの必要十分条件は、サービス提供側(私達の医療法人)の質量充実とサービス需要側(患者さん)の自助努力です。
今後は、クリニックでの診療充実のみならず、患者さんの健康意識を啓蒙し、自助努力を促すことを目的とした事業(講演会など)や情報発信を他業種などと連携して積極的かつ効果的に行い、社会満足度を高める医療サービスを構築することに貢献邁進してゆきたいと思います。

平成29年1月1日

医療法人総志会
理事長 宗像靖彦

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