宗像靖彦クリニックでは、健康生活に必要なあらゆる情報発信をしております。
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リウマチQ&Aリウマチと診断されたら、食事は・・?2018.02.17
Q:リウマチと診断されたら、食事はどのように気を付けたらいいですか?
A:太らないように気を付けてください。リウマチの治療では治療薬の投与量が体重換算で決定されることが多いため、体重が重いと、治療に必要なお薬も多くする必要があります。お薬代が高くなってしまいます。
リウマチQ&Aリウマチの原因は人それぞれと聞いたことがあるのですが2018.02.17
Q:リウマチの原因は人それぞれと聞いたことがあるのですが、どんなものが考えられますか?
A:喫煙がリウマチ発症重大なリスクです。しかし、一般的にリウマチの原因は不明です。ウイルス感染がリウマチ発症の引き金を引くという考えがありますが、すべてのリウマチ患者に当てはまる原因ではありません。
リウマチ関節リウマチと妊娠について2018.01.04
関節リウマチの発見が早くなるにつれて、「妊娠」について考慮しなければならないことが多くなってきています。
一般的に関節リウマチは妊娠による免疫寛容(プロゲステロンによる抗炎症作用などによると考えられています)で改善の傾向をとることが多いと考えられています。しかし、病勢が強いままで妊娠しても大きな改善が得られるわけではありません。また、出産後は悪化する可能性が高いことから、妊娠前の十分な病勢コントロールが大切です。
関節リウマチの病勢コントロールには治療薬が必須ですが、「妊娠」に際しては、治療薬の調節が必要です。しかし、ここで難しいのは、治療薬を調節するための絶対的な根拠が無いことです。関節リウマチ治療薬の母体や胎児に対する有害事象は、動物実験の成績に基づいた判断と、これまでの偶発的な出来事(たまたま該当薬剤を服用したまま妊娠してしまったなど)の積み重ねから得られた少数例の統計成績から判断されるため、必ずしも絶対事実ではありません。例えば、メトトレキサートは添付文書上のルールとして妊娠可能性のある患者さんには絶対禁忌となっており、妊娠前の服用中止が推奨されています。しかし、少数例の偶発的統計では、妊娠判明時(妊娠数週)まで服用していても、奇形の発生確率を高めないとの報告もあります。とは言え、少なくとも、胎児の奇形リスクにかかわる妊娠4~16週では催奇形性を有する薬剤の体内濃度はゼロにしておく必要があります。これに該当する薬剤が、メトトレキサート(リウマトレックスなど)とレフルノミド(アラバなど)です。反対に、妊娠中の投与について絶対禁忌とされていない治療薬がスルファサラジン(アザルフィジンなど)です。副腎皮質ステロイドホルモンについては、胎盤透過性の比較的少ない(約10%)プレドニゾロンを使います。
生物学的製剤についてはどうでしょうか?添付文書上は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ生物学的製剤の投与が可能(慎重投与)とされていますが、開発後の市販実績の多い抗TNFα製剤を使用することが多いのが現状です。
関節リウマチ治療中または治療開始予定の患者さんで妊娠を希望する患者さんに対しては、妊娠に至るまでの治療計画が必要です。「いつ」妊娠したいのか、ご自身の希望を治療担当医にはっきり伝えるようにしてください。担当医が妊娠希望患者さんの治療計画を立てる上でのポイントは「妊娠希望期限までにメトトレキサートやレフルノミドを使用しない状況下で寛解状態に導入すること」です。
リウマチ関節リウマチと喫煙について(2)2018.01.03
関節リウマチの発症と喫煙について、ちょっと詳しく説明しましょう。
関節リウマチ診断の指標で抗CCP抗体という検査があります。これは抗環状シトルリン化抗体というたんぱく質です。この抗体は関節リウマチとの特異度が90%以上を示す検査で、特に関節リウマチの関節破壊の重症度とかかわるたんぱく質と考えられています。つまり、抗CCP抗体陽性の方は、90%以上の確度で関節リウマチに罹患していると言っても過言ではなく、しかも、関節破壊の激しい、質の悪い関節リウマチを患っていることが推定されるのです。
一方、関節リウマチではその発症に白血球の型(HLA)が関与していると言われています。赤血球の型は、ABO式の型分類がありますが、白血球にもHLAと言われる型が分類されています。関節リウマチではHLA-DRたんぱくを構成するアミノ酸に共通の配列が検出される傾向があると言われ、この共通の配列がシェアドエピトープと称されています。
喫煙犯人説における有力な仮説では、たばこの毒性により肺内でシトルリン化たんぱくが出現し、抗CCP抗体が誘導されるとされています。実際、HLA-DRにシェアドエピトープを持っている患者さんでは、喫煙者で抗CCP抗体陽性者が多く、なおかつ重症例が多いことが証明されています。
関節リウマチのすべてが喫煙で発症するということではありませんが、喫煙が体内で関節リウマチ発症の中心的な役割を担っていることはほぼ確定的です。このようなたとえ話がわかりやすいかも知れません。シェアードエピトープを持っている方は、「関節リウマチ号という自家用車」を持っているのですが、車は持っているだけでは走りません。喫煙という「エンジンキー」を入れることによって、抗CCP抗体という「アクセルペダル」を踏み、さらに喫煙でアクセルペダルを強く踏み込むことになるのです。かくして関節リウマチ号はトップスピードで走行してゆくのです。
関節リウマチに罹患している、喫煙患者さんは、即刻、喫煙をやめなければなりません。これは自分だけの問題ではありません。副流煙により他人の自家用車のエンジンキーを回してしまっている可能性があるのです。関節リウマチにおける喫煙は医学的問題を超えて、人としての理性や道徳性といった人間性の問題なのです。
リウマチリウマチ友の会講演会要旨 「国家存亡をかけた医療サービス」2017.11.01
I)日本の医療制度の危機的状況について
わが国では少子高齢化に伴い医療制度の根幹が揺らいでいます。日本の国家予算は年間97兆円ですが、年間の医療費は42兆円に膨らんでいます。国家事業として国民皆保険制度を施行していますが、この制度は「おたがいさま」という互助の精神に基づいた制度です。保険料を納めてもそれを使わない健康な納税者がたくさんいることで成立しています。日本の医療費の53%は70歳以上の高齢者の医療費として支出されています。この医療費の捻出に貢献しているのが、「納める保険料>支出する医療費」を実践している20歳~60歳の国民です。日本の人口ピラミッドは釣り鐘型を呈しており、今後、高齢者の医療費を支える20歳~60歳の就労人口が減ってきます。現在のような質の高い医療サービスを制度として維持することは、たとえ消費税を増税したとしても不可能な状況です。つまり、保険料徴収額を増やすこと(納税者を増やすか納税額を増やすかということ)のみならず、医療費の支出を防ぐことも行ってゆく必要があるのです。日本の医療制度崩壊を防ぐ唯一の方法は、医療費支出を可能な限り抑えながら、国力を蓄え、200年かけて人口ピラミッドを適正化してゆくこと以外道はないのです。
II) 日本の医療実態
現在の日本の医療実態をチェックしてみます。日本人の平均寿命は平成25年の調査で女性が86歳、男性が80歳です。一方、自立して生活できる「健康寿命」はどうでしょうか?女性が74歳、男性が71歳です。つまり、日本人の晩年10年間は介護を必要とする人生になってしまうのです。当然、認知症や寝たきりが多くなります。全世界を見渡しても、平均寿命と健康寿命のギャップについては、日本は群を抜いて大きい国なのです。ちなみにアメリカでは平均寿命と健康寿命のギャップは8年、ドイツは7年、高福祉国家ノルウェーも7年です。前項で述べたように、日本の医療費は70歳以上の高齢者に53%が支出されています。医療費の大半はこのギャップ、すなわち健康寿命を維持できなくなった期間に出動されているのです。日本の医療費出動実態から見ると、寝たきり状態になった後に支出される事後処理型医療とも言えます。
次に、日本人の死亡原因を調べてみましょう。昭和20年代の死亡原因の第一位は結核でした。幸いなことに、抗生剤の登場で、死に至る病だった結核を克服することができました。そして現在の死亡原因上位は、癌、心疾患、脳血管疾患、肺炎です。癌は人体を構成する細胞の細胞分裂ミスコピーから発生します。生物であれば、細胞分裂のミスコピー蓄積は避けられません。癌死は「生物死」として加齢とともに増加することは統計上必然的なリスクとみなされます。心疾患・脳血管疾患は高血圧症や糖尿病などの生活習慣病を基盤に発生します。これらのリスクは現代の医療で克服しなければなりません。肺炎は寝たきりや誤嚥で発生し、死に至ります。寝たきり状態の原因は、脳血管疾患・筋力低下・骨粗しょう症・関節リウマチ・認知症であることがわかっています。これも克服しなければなりません。このように見てくると、生活習慣病の改善や、寝たきり状態にならないようにすることで、健康寿命延長が担保され、平均寿命とのギャップが埋まってくるであろうということがわかります。
70歳以上の高齢者に対して出動する莫大な医療費の芽は、生活習慣病によって膨らんでゆくのです。ということは、この芽は、「納める保険料>支出する医療費」を実践し日本の医療制度を支えている20歳~60歳の世代のうちにすでに発芽しているのです。65歳以上の国民における医療費出動の36%は循環器系疾患、10%はリウマチ・骨粗しょう症などの筋骨格系疾患で、事後処理型医療であることを反映しているようです。この中で、さらに、医療費高騰の真犯人を突き止める必要があります。日本の保険制度は医療費出動を抑えるために、毎年、様々な改定が行われています。その結果、医療機関に支給される医療費は年々減少しています。医療機関は身を削って、日本の医療制度を支えているのに、どうして医療費が抑制されないのでしょうか?実は、医療費高騰の真犯人は製薬会社に支払われる「薬剤費」なのです。国が「ジェネリック医薬品」を推奨するのはこのためです。
重ねて強調しますが、日本の医療実態は、病気になってから手厚く治療する事後処理型医療なのです。この制度は、病気になっても安心して質の高い医療を受けることができるというのが特徴です。しかし、私たちは病気にならないことのほうがより貴重で価値があることなのだということに気づく必要があります。健康であるためにどうしたらよいのかを個人個人が考え、実践してゆくことが私たち国民の義務なのです。
III)価値観を見直す~健康寿命120歳プロジェクト~
日本の医療制度崩壊を防ぐ唯一の方法は「元気で長生き(医療費を使わない)、社会貢献(所得増加による納税)できる高齢者を増加させる」こと以外にありません。長生きの目標は人間としての生物学的寿命120歳です。人間の細胞分裂ミスコピーの蓄積は120歳までに癌を発生させると計算されています。まずは、ここまで、元気で生き抜く覚悟を持つ必要があります。生活習慣病、寝たきり状態(脳血管疾患・筋力低下・骨粗しょう症・リウマチ・認知症)を予防または克服する必要があります。まずは生活習慣を見直しましょう。生活習慣病を誘発する過食、筋力低下を誘発する運動不足を避けることが第一歩です。「食事」と「運動」に有効な自己投資をしてください。病気から身を守るための予防は国の医療制度が支えてくれるものではありません。自己努力が必要です。添加物の多い食品を避け、多少値段が高くても旬のもの、良いものを選んで、食べましょう。腹八分を超えてはいけません。運動する機会を作りましょう。スポーツクラブやジム、パーソナルトレーニングなど、必要であれば積極的にお金を使うべきです。このような意見は贅沢と解釈されるかもしれません。しかし、日本人の消費行動調査統計によると、節約したくない家計費の第一位がレジャー・娯楽費、第二位が食品・飲料費、第三位が交際費、第四位が医療費となっています。健康への投資が後回しになる傾向が見えます。また、日本の医療費は42兆円ですが、娯楽費には65兆円、葬儀費には20兆円が費やされ、国民の財布から直接支出されています。娯楽などの瞬時の悦楽や死んだ後のセレモニーに、多くの費用が支出されているというのが、現在の日本の実態なのです。お金の使い方は、個人の価値観の問題ではありますが、このような現状の下で日本の医療費が高いという議論が成立するのか、疑いたくなる出費メンタリティーではないでしょうか?ちなみに、東日本大震災後に仙台で開催された「嵐」のコンサート、経済効果は93億円だったそうです。
現代の日本人には豊かさがあります。個人個人の価値観を見直し、事後処理型医療制度に依存しないで、疾病予防に投資してゆくことに大きな価値を見出してゆくことが必要です。そして「病気にならないぞ。寝たきりにならないぞ。そのために自分への投資をするぞ。」という考え方が、文化あるいは習慣として根差せば、少子高齢化に伴った医療制度崩壊リスクは回避できると考えられます。120歳まで元気で長生きする。そして社会貢献をする。このことがたわごとや空想ではなく、常識的な目標として認知されることを目指してゆきたいと思っています。
IV) 関節リウマチ治療における「健康寿命120歳プロジェクト」
関節リウマチの治療は発症早期に適切な治療介入をすることで、生命予後や機能的予後を劇的に改善させることができるようになっています。当院に通院中の関節リウマチ患者さんの年齢層ピークは50歳代ですが、患者さんのリウマチ発症年齢はもっと若い時期だったはずです。患者さんの社会貢献機会喪失を防ぐためには発症から診断までの時間的ロスをなくす必要があります。そこで、当院に通院する40歳以下のリウマチ患者さん102名のアンケート協力をいただき、当院受診までのプロファイルを分析してみました。
【患者さんのプロファイル】
20歳代後半で関節痛を自覚。関節リウマチという病名のイメージは無く、一時的な腱鞘炎と思う。症状出現から半年以内には、整形外科または整骨院を受診している。この時期には関節リウマチの診断には至っていない。定期的受診はせずに、症状の悪化などに合わせてたびたび受診していた。関節症状の改善が無いため、たまたま当院の連携医療機関を受診。関節リウマチ疑いとなり、当院への紹介を受けて当院受診に至る。初めの症状発生から当院受診までに約10年を要している。
関節リウマチは、患者さんの社会貢献機会を低下させ、健康寿命へのリスクになります。患者さんは症状を自覚後、比較的早い時期に医療機関を受診していました。当院受診までのおおよそ10年間はある程度の関節症状を抱え、社会参加の満足度は低かったと推定されます。この10年の喪失を無くすための今後の対策として、患者さんが最初に受診する地元の整形外科や整骨院と緊密な連携を構築し、リウマチの診断時期と治療介入時期を早めてゆくことに努力したいと思っています。
皆さんも、子どもたちに託せる日本を創るため「健康寿命120歳プロジェクト」に参加してみましょう。