ムナクリ通信

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新型コロナウイルスCOVID-19感染拡大と社会情勢(2020.4.13掲載記事:再掲載)2021.04.20

緊急事態宣言以降、社会がざわついています。当院を受診される患者さんの一部にも、どんな症状もコロナウイルス感染に結び付けて考えるという傾向がみられるようになってきています。熱っぽかったらコロナ、咳をしたらコロナ、だるかったらコロナ。健康意識の高まりとも言えますが、過剰な思い込みは、パニックの連鎖を引き起こします。

腎盂炎で微熱のあった患者さんが、家庭では家族から「コロナだから近寄るな」と言われ、涙ながらに診察を受けるケースもありました。コロナウイルスに感染してしまった患者さんやその家族が不当な差別を受けるなどの報道も耳にするようになりました。

今回の新型コロナウイルスCOVID-19は人類が初めて遭遇したウイルスで、だれも免疫(抗体)を持っていません。ここが、季節性インフルエンザなどいわゆる風邪との違いです。抗体を持っていない人は、だれもが感染する可能性があるのです。一方、回復した患者さんはウイルスに対する免疫を獲得しているので、普通の生活に戻ることができるのです。

現在、日本で行われている自粛要請は、国民一人一人がウイルスに感染しないようにすることではありません。感染が一気に拡大して、その中に一定の割合で含まれる重症者が急増することを防ぐ目的でなされています。公衆衛生学的視点に基づく対策なのです。

個人個人の話としては、「今日は感染しないように注意しよう」、「昨日注意できたから今日も注意しよう」、もし感染してしまったら「栄養と休養をとって早く回復(免疫を獲得)しよう」、「回復したら、いつも通りに働こう」ということになります。

そして、思いやり(Compassion)の気持ちを大切にしましょう。
If you want others to be happy, practice compassion.
If you want to be happy, practice compassion.
ダライ・ラマの言葉です。病気で苦しむ人が健康になることは、社会の利益になるのです。すべては一つなのです。今回の新型コロナウイルスCOVID-19感染では日本より衛生状態、医療供給体制の悪い国の人たちが苦しんでいます。食糧難に陥る途上国が出てきています。これらの国で起きている出来事も私たちは注視する必要があります。食料を輸入に頼る日本は世界の多くの国々に支えられているからです。パンデミックに直面してしまった人類は、協力し合わなければなりません。すべては一つなのです。一国主義が台頭しないように、個人主義に陥らないように、私たちは賢く、理性的にふるまわなければなりません。

日々増加する感染者数やクラスターの話題や医療崩壊のニュースも大事ですが、パンデミックを冷静に受け止めて考察する必要があります。ハンガリーでは、新型コロナウイルス感染拡大への対策法が実施されました。無期限の非常事態と首相への権力集中、独裁です。過去にもスペイン風邪のパンデミック後にナチスが台頭し、第二次世界大戦への突入していった歴史があります。今回の新型コロナウイルスCOVID-19感染拡大は、人々の理性を奪い、社会秩序を危うくする大きな試練です。人類は試されているのかもしれません。

新型コロナウイルスCOVID-19感染症は、過半の人々が抗体を獲得した時点で終息となります。重症化した患者さんは、成人スチル病や血球貪食症候群に似た高サイトカイン血症を呈します。体内で異常に激しい免疫反応が起こっているようです。これまでに私たち医師が遭遇し、治療経験を持つ類似病態があるのです。特効薬の開発やワクチンの開発に目途がつくまで、何とか重症状態を回避する治療を講じてゆくことは可能なのではないかと思います。

一人一人が、思いやりの心を持ち、すべては一つであることを忘れなければ、人類は進化してゆくことでしょう。

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