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院長日記医療費の適正化を目的とした診療様式について2017.02.01
~当院の取り組み~
一人当たりの医療費は、以下の式で構成されます。
「一人当たりの件数」x「一件当たりの日数」x「一日当たりの診療費」
① 一人当たりの件数:一人の患者が受診した医療機関の数
② 一件当たりの日数:一人の患者が同一の医療機関に通った日数
③ 一日当たりの診療費:一人の患者さんにかかった医療費用
健康意識の個人差は大きいため、患者さんの医療機関への依存度もまちまちです。些細な症状でも大いに気にかかってしまう方は、多くの医療機関に頻繁に受診し、その都度検査、投薬を受けるため、上記の①②③のいずれも大きくなります。このため莫大な医療費がかかることになります。日本の医療制度では、フリーアクセス(患者さんはどの医療機関にも自由に受診できる)の権利が保障されていることから、①は患者の意識に大きく依存しています。③は治療に関連する要素であるため、医療機関に大きく依存しています。②は健康管理・病気管理について患者さんと医療機関との認識の一致性に依存しています。受診している医療機関でしっかり分析された健康管理方法・病気管理方法を患者さんが理解し、信頼できるようであれば小さくなります。医療機関における分析が不十分で、管理方法に妥当性や信頼性が乏しい場合は大きくなります。②については患者さんと医療機関の共同作業で小さくすることが可能な要素なのです。
日本における受診日数は、下に示すように先進国の中でもかなり多いのです。国民の健康意識が「予防」・「自己管理」の方向に向かうことで、日本でもこの要素を少なくしてゆくことが可能となります。
【受診日数の各国比較(国民一人当たりの年間平均受診回数)】
日本 21
アメリカ 5.3
イギリス 4.8
フランス 5.2
スウェーデン 2.7
そもそも、社会参加を阻害する病気にはならないことが普通でなければなりません。ところが、現代の日本では病気になったら手厚く治療することが普通になってきつつあります。つまり、病気になることが前提の医療体制なのです。超高齢化を迎えた現代において、我々日本国民は普段から病気予防に努め、不幸にして病気になってしまったら、医療機関の指導のもとで、社会参加を目的に徹底した「病気管理」「健康管理」を行って行くことを常識としてゆく必要があります。このような発想の転換が実現してゆけば、「受診日数の低下」がその指標となってきます。
当院では、平成28年4月より予約診療の様式を「完全予約制」から「管理予約制」に変更しました。「管理予約制」では治療や検査など、医学的管理の上で来院が必須な患者さんにのみを予約適応としました。また、同一傷病名での複数医療機関受診(重複診療)をなくすため、連携医療機関との連携強化(患者さん診療情報の提供や紹介)に注力しました。これらの診療様式改善によって、患者さんの受診回数の適正化が得られてきています。
【当院再来患者さんの一カ月ごとの来院回数の変化】
平成28年1月~3月(完全予約制)
再来患者さんの延べ人数 6,282名
1回来院 3,844名
2回来院 827名
3回来院 156名
4回来院 56名
5回以上 18名
平成28年10月~12月(管理予約制)
再来患者さんの延べ人数 5,150名(18%減少)
1回来院 3,631名(6%減少)
2回来院 506名(39%減少)
3回来院 102名(35%減少)
4回来院 36名(36%減少)
5回以上 11名(39%減少)
【当院受診患者さんの連携医療機関へのご紹介数の変化】
平成28年1月~3月(完全予約制)
再来患者さんの延べ人数 6,282名
紹介数 194名
平成28年10月~12月(管理予約制)
再来患者さんの延べ人数 5,150名(18%減少)
紹介数 254名(31%増加)
医療を必要とする患者さんに適正な医療を行うために当院では今後も「管理予約制」を継続してゆきますが、緊急の患者さんへの対応に機敏性を欠くといった弊害も懸念されてきています。今後、「管理予約制」を軸とした更なる診療様式の変更適正化を提案してゆく予定です。