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第11回異と和~違いが調和を紡ぐ時代へ~議事録2026.01.11

MRオープンカフェ
令和8年1月11日
仙台奥羽ロータリークラブ1月臨時例会
MRオープンカフェ第一部



日本の食料自給率から考える

発表者
● ファシリテーター: 旭化成ファーマ株式会社 古西尚幸氏

概要
● 集会では、「日本の食料自給率から考える」をテーマに、日本の食料自給率の現状、その低迷の背景、そして将来の食料安全保障に向けた課題と対策について論じている。生産額ベースとカロリーベースの2指標を解説し、特にカロリーベースが38%と低水準で推移している点を指摘。その要因として、食の欧米化、農業従事者の高齢化、耕作放棄地の増加などを挙げる。食料不足が顕在化した場合のリスクとして国際競争の激化や国内の社会不安を提示し、対策として国内生産力の強化(スマート農業など)と輸入拡大・備蓄強化の2方向性を示す。最後に、どちらを優先すべきか、また個人として何ができるかについてディスカッションを促している。

知識ポイント(講演)
1.日本の食料自給率の現状
● 食料自給率の2つの指標
 ○ 日本の食料自給率には「生産額ベース」と「カロリーベース」の2種類が存在する。
 ○ 生産額ベース:国内生産された農作物の金額が、国内で消費される農産物の総額に占める割合。令和6年時点で64%。国内価格の上昇や米・野菜・畜産物の増加が要因。
 ○ カロリーベース:日本人が1日に摂取する総カロリーのうち、国内生産された食料が占める割合。2023年から25年にかけて38%で横ばい。米・小麦・トウモロコシなど穀物の影響が大きく、低めに出やすい。
● 政府の目標と現状
 ○ 政府は2000年に2030年までにカロリーベース自給率を45%へ引き上げる目標を設定したが、未達成が続く。
● 主要品目別の自給率(2024年度)
 ○ 米は97%と高いが、小麦や大豆は海外依存度が高く、国際情勢の変化に脆弱。

2.食料自給率低迷の背景と食文化の変化
● 自給率低迷の複合的要因
 ○ 米消費の減少、悪天候による小麦・大豆の不作、食文化の変化が複雑に絡み合う。
● 戦後の食文化の変遷
 ○ 1945年~60年:学校給食でパンが普及し、米文化にパン食が導入。
 ○ 1960年~70年(高度経済成長期):肉・乳製品・油脂の摂取増で食の欧米化が進行。
 ○ 1970年~90年:外食産業が急拡大し、欧米化がさらに進む。
 ○ 1990年代以降:共働き世帯の増加で冷凍食品・レトルトが普及。
 ○ 2000年以降:SNS普及で食文化の発信が変化し多様化。仙台市内の飲食店街のようにタイ・インド・イタリアなど多国籍の食文化を楽しめる。
 ○ こうした食文化の変化は食料自給率の低下と強く相関。

3.食料不足のリスクと国内農業の課題
● 食料不足時の国際競争
 ○ 食料不足が顕在化すると、資源国の輸出停止や輸入国間の争奪戦が起こりうる(例:ウクライナ侵攻時の小麦市場混乱)。
● 国内で起こりうる社会不安
 ○ パニック買い、買い占め、物価高騰により社会不安や飲食産業への打撃。江戸時代の米騒動のような事態も想定。
● 令和の米騒動(2024年-2025年)
 ○ スーパーから米が消え、5kgあたり4000 円超の異常な価格上昇。長年の構造問題、気候変動、不安定な国際情勢が絡み合った結果。
● 国内農業の構造的問題
 ○ 耕作放棄地の増加:2023年時点で25.7万ha(農地全体の約 6%)。うち16.3万haは再生困難な荒廃農地。10年後には耕作者不在農地が31.7%に達する予測。
 ○ 担い手不足と高齢化:農業従事者の70%が65歳以上。後継者不足、労働効率低下、鳥獣害などが要因。
 ○ 農業経営の困難さ:機械の老朽化と高額な更新費、燃料費・肥料高騰が経営を圧迫。

4. 食料安全保障への投資と未来の農業
● 国内生産力の強化
 ○ 脱・輸入依存へ。小麦・大豆・加工用野菜などの国内生産強化。例:香川県のうどん用小麦「さぬきの光」。
● 未来への投資
 ○ スマート農業:AI・ロボット等の先端技術で労働生産性と土地活用性を向上し「儲かる農業」を目指す。
 ○ 気候変動への対策:灌漑設備投資や技術開発で、気候影響に強い安定的な農業を志向。
● 先進的な農業経営の事例(青森「日本農業」)
 ○ 商社出身の社長が「儲かる農業」を掲げて設立。
 ○ リンゴの密集栽培:木間隔を詰め、収穫コスト・労力を削減。初期投資はかかるが 5~6年で回収可能。
 ○ 「葉取らずりんご」のブランド化: 葉を取らず栽培し、光合成を最大化して糖度を平均1%向上。模様は残るが味を強みに出荷し、作業負担を削減。
● 農業への企業参入
 ○ 過去5年間で法人・団体の参入が1,000件(2.9%)増。個人農地の集約による効率化、休日確保など人材確保ニーズが背景。
 ○ 企業参入のメリット:従事者平均年齢が10歳若い58歳、安定的な労働力、ICT・スマート農業導入のしやすさ。
● 輸入拡大と備蓄の強化
 ○ 国内生産強化と並行し、輸入拡大で安定的な食料確保を図る選択肢。必要物資の備蓄インフラ整備も含む。

【食料自給率向上に関するグループディスカッション】
● 2グループに分かれ、食料自給率向上のための2つの選択肢を検討。
 1. 国内農業の競争力強化
 2. 輸入先の多角化・備蓄強化
● 両グループとも主に選択肢1(国内農業の競争力強化)が重要との認識で一致。
 ○ 生鮮食品は国内生産を優先すべきとの意見多数。
 ○ 穀物などは選択肢2(輸入)も有効との見方あり。
国内農業強化のための具体的なアイデア
● 課題:農業従事者の減少と就業環境(特に賃金の低さ)が大きな問題。
● 対策案:
 ○ 法人化・公務員化(国有化)など、国の戦略として体制強化。
 ○ 若年層・企業の参入支援、AI 活用の推進仕組みの整備。
 ○ 品種改良を進め、安定収益を確保できる体制の構築。
個人でできる取り組み
● 地産地消:国産品、特に地元産の優先購入が重要との合意。
 ○ スーパーの地元産コーナーや道の駅の活用。
● フードロス削減:
 ○ 余った弁当を安易に廃棄しない等、日々の業務・生活で無駄を減らす取り組み。
● 農業への支援:
 ○ ふるさと納税等を活用した地域還元が個人支援の一案。
食料自給率と食生活の関係性
● カロリーベース自給率が低い一因として、家畜飼料の輸入依存を指摘。
● 牛肉などの消費が多い肉食中心の食生活は海外依存を高め、カロリーベース自給率を下げる可能性。
● 消費者の購買選択(何を、どこで買うか)が食料自給率に密接に関係。

「異と和」企画の今後の予定
● 2月は小売業態と食料自給率のドッキング深掘り会を行います。

議事録(PDFダウンロード)